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今回の記事はランニングとは直接は関係なく書籍の記事です。
池井戸潤さんの『ハヤブサ消防団 森へつづく道』(2026年8月5日発売)を読みました。
2022年に発売され、2023年には柴田錬三郎賞を受賞した『ハヤブサ消防団』の待望の続編です。
前作では、ミステリ作家の三馬太郎が亡き父の故郷である八百万町ハヤブサ地区に移住し、地元の消防団に入団。のどかな田園風景の中で起こる連続放火事件をきっかけに、町に潜む秘密へと迫っていきました。
今回の『森へつづく道』では、ハヤブサ地区で暮らすようになって数年が経過した三馬太郎が主人公です。
前作を読んでいたこともあり、今回も「三馬太郎とハヤブサ消防団の仲間たちにまた会える」という楽しみがありました。
前作『ハヤブサ消防団』はドラマ化された
『ハヤブサ消防団』を語るうえで忘れてはいけないのが、前作がテレビドラマ化されたことです。
2023年7月からテレビ朝日系で放送され、主人公のミステリ作家・三馬太郎を中村倫也さんが演じました。
ヒロイン役を川口春奈さんが務めたほか、満島真之介さん、古川雄大さん、岡部たかしさん、梶原善さん、橋本じゅんさん、山本耕史さん、生瀬勝久さんなど、個性的な俳優陣が出演しています。
池井戸潤さんといえば、『半沢直樹』や『下町ロケット』など、銀行や企業を舞台にした作品のイメージが強いと思います。
その池井戸さんの作品が、山あいの小さな集落を舞台にしたミステリーとしてドラマ化されたということでも、当時はかなり話題になりました。
私も前作を読んだ後にドラマを見ることで、三馬太郎や消防団のメンバーが実際に動いている姿を見ることができ、小説とはまた違った楽しみ方ができました。
ドラマ版では、中村倫也さんが三馬太郎を演じています。
小説を読んでいると、自分の頭の中で登場人物の声や表情を想像しますが、それを実際の俳優さんが演じることで、また違った印象になるのが面白いところです。
そして、前作のドラマを見た人にとっても、今回の『森へつづく道』は興味深い作品ではないでしょうか。
「ハヤブサ消防団のその後はどうなったのか?」
そんな気持ちで読み始めることができると思います。
『ハヤブサ消防団』の続編として楽しめる
まず感じたのは、やはり前作を読んでいるからこその面白さです。
前作の三馬太郎は、東京での生活を離れ、父親の故郷であるハヤブサ地区に移住してきた、どこか頼りないミステリ作家でした。
そんな太郎が消防団に入り、地元の人たちと交流しながら、町で起こる事件に巻き込まれていきます。
ところが今回の太郎は、すでにハヤブサ地区の住民の一人です。
消防団の仲間たちとの関係もできあがっており、前作に比べると、太郎自身が町に根を下ろしたことが感じられます。
この「主人公がその土地の人間になっていく」という部分も、続編ならではの魅力だと思います。
若い女性の死から始まる新たな事件
物語のきっかけとなるのは、八百万町で発見された若い女性の水死体です。
一見すると事故や自殺にも思える出来事ですが、そこにはいくつもの疑問が残されています。
さらに、太郎の作家としての活動も物語に絡んできます。
太郎は文学賞にノミネートされ、その最大のライバルとして注目されるのが、歴史ミステリ作家の北原未南です。
つまり今回の作品では、
「地方の町で起こる事件」
と
「作家の世界で起こる出来事」
が同時進行で描かれていきます。
この二つがどのようにつながっていくのか。
そこが本作を読み進めるうえで大きなポイントになります。
今作で特に興味深かった「満州」の話
今回、私が特に興味深いと感じたのが、第二次世界大戦時の満州での出来事が物語に絡んでくることです。
詳しい内容を書くとネタバレになってしまうので、ここでは具体的には触れません。
現在の八百万町で起こっている出来事を追っているはずなのに、物語を掘り下げていくと、戦前・戦中の満州へとつながっていく。
この展開にはかなり引き込まれました。
単なる現代の事件ではなく、
「過去に何があったのか」
という歴史そのものが、現在の人々の人生に影響を与えているのです。
そして、ここからは私個人の感想ですが、物語の中で描かれている出来事はもちろんフィクションです。
ただ、読んでいると、
「本当にこんなことがなかったと言い切れるのだろうか」
と思ってしまうような部分があります。
第二次世界大戦当時の満州では、多くの日本人が生活していました。
戦争が終われば、それまで当たり前だった生活が一変します。
普通に暮らしていた人。
家族を守ろうとしていた人。
国の政策に翻弄された人。
そして、戦争によって人生を大きく変えられた人。
そうした人たちが実際に存在していたことを考えると、本作の物語を単なるフィクションとして片付けることができないように感じました。
もちろん、小説で描かれている出来事が実際に起きたという意味ではありません。
しかし、
「満州では、実際にも似たような出来事が起きていたのではないか」
と想像させられるところが、この作品の非常に興味深いところだと思います。
池井戸潤作品としては異色の面白さ
池井戸潤さんというと、『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』『七つの会議』など、企業や組織を舞台にした作品を思い浮かべる人が多いと思います。
しかし、『ハヤブサ消防団』シリーズはかなり雰囲気が違います。
舞台は地方の町。
主人公はミステリ作家。
そして、主人公の仲間は地元消防団のメンバーです。
それでも読み進めると、池井戸作品らしい「人間の欲望」「組織の論理」「隠された秘密」といった要素がしっかりと入っています。
そのため、
「池井戸潤さんが田園ミステリーを書くと、こういう作品になるのか」
という面白さがあります。
企業小説とは違った池井戸潤さんの魅力を感じられるシリーズです。
『森へつづく道』というタイトルも印象的
そして、読み終わった後に改めて考えてしまうのが、このタイトルです。
「森へつづく道」
この意味は物語の後半に出てきますが、ここでも多く語られず読者に推測される展開になっています。
単純に場所を表しているだけではなく、物語全体を象徴しているようにも感じます。
現在から過去へとつながる道。
人から人へと記憶が受け継がれていく道。
物語を読み終わってからタイトルを見ると、最初とは違った印象を受けました。
2026年10月からは『俺たちの箱根駅伝』もドラマ化
池井戸潤さんの作品が好きな方には、もう一つ楽しみがあります。
2026年10月からは、池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝』のドラマ化も予定されています。
私は『俺たちの箱根駅伝』については、すでに原作を読んで完読しています。
そのため、ストーリーについてはすでに把握しています。
原作を読んでいる作品がドラマ化される場合、展開を知らない状態で見る楽しみはありません。
ただ、2年前ぐらに読んだので、忘れている部分も多いですが・・・(笑)
一方で、原作を読んでいるからこそ楽しみなのが、
「この登場人物を俳優さんがどのように演じるのか」
という部分です。
小説を読んでいると、登場人物の表情や声、話し方などを自分の頭の中で想像します。
それが実際に俳優さんによって映像化されると、
「自分がイメージしていた人物と近い」
と思うこともあれば、
「なるほど、この人物をこういうふうに表現するのか」
と新しい発見があることもあります。
特に『俺たちの箱根駅伝』は、駅伝というスポーツを題材にしているだけでなく、選手、監督、スタッフ、関係者など、それぞれの立場の人間ドラマが描かれている作品です。
原作を読んでストーリーを知っているからこそ、今度は俳優さんたちが登場人物にどのような息を吹き込むのかを楽しみにしています。
私自身ランニングをしていることもあり、箱根駅伝を題材にした池井戸潤さんの作品には以前から興味がありました。
原作を読んだときに頭の中で想像していたシーンが、実際の映像としてどのように再現されるのか。
そこにも注目したいと思っています。
↓原作を読んだ感想はこちら
まとめ
『ハヤブサ消防団 森へつづく道』は、前作のファンはもちろん、歴史ミステリーが好きな人にもおすすめしたい作品です。
若い女性の死をきっかけに始まる事件。
三馬太郎と消防団の仲間たち。
文学賞をめぐる作家同士の関係。
地方の町に残された過去。
そして、第二次世界大戦時の満州へとつながっていく物語。
さまざまな要素が絡み合いながら、一つの大きな謎へとつながっていきます。
特に私が面白いと思ったのは、満州での出来事が単なる「昔の話」として描かれているのではなく、現在の出来事とつながっているところです。
もちろん小説なので、描かれている出来事そのものが実話というわけではありません。
それでも、
「戦争中の満州では、実際にも似たような出来事が起きていたのではないか」
と考えさせられる部分がありました。
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